親愛なる映画ファンの皆様、こんにちは。歴史映画ソムリエのマルセルです。
本日ご紹介するのは、戦場の英雄を巡る知られざる戦いを描いた感動作、『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』(2019年)です。
本作は、ベトナム戦争で勇敢な救出作戦を遂行し、多くの兵士の命を救いながらも戦場に散ったウィリアム・H・ピッツェンバーガー空軍上等兵の実話を基にした物語です。
彼の英雄的行為は当時正式な名誉勲章の授与を受けることはなく、彼を知る人々が50年の歳月をかけて、その栄誉を取り戻そうとした戦いが描かれます。
主演はセバスチャン・スタン、共演にはサミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、ピーター・フォンダといった名優が勢揃い。
「正義」とは何か、「英雄」とは何かを問う重厚なドラマとなっています。
本作は、単なる戦争映画ではありません。戦場の記憶が時間を超えてどのように影響を与えるのか、社会が英雄をどのように扱うのかを問う作品です。
作品基本情報
項目 | 情報 |
---|---|
タイトル | ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 |
原題 | The Last Full Measure |
製作年 | 2019年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | トッド・ロビンソン |
主要キャスト | セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、サミュエル・L・ジャクソン、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、ピーター・フォンダ、ジェレミー・アーヴァイン |
ジャンル | 戦争、伝記、ドラマ |
上映時間 | 110分 |
評価 | IMDb:6.8/10、Rotten Tomatoes: 62% |
物語の魅力
① ベトナム戦争の英雄と、50年越しの正義
- 1966年、ベトナム戦争の激戦地で、空軍救難隊員ウィリアム・H・ピッツェンバーガーは、負傷した兵士を救うため、自ら危険な地上戦へと降下。
- 数多くの兵士を救った後、自らは戦死したものの、その英雄的行為は正当な評価を受けることはなかった。
- 50年後、国防総省の官僚スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)が、彼の名誉勲章授与の申請を調査する中で、隠された真実を知ることになる。
② 名優たちの競演による圧倒的な演技
- クリストファー・プラマー(ピッツェンバーガーの父役)、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソンなど、名優たちが揃い、戦争の傷を抱えた元兵士たちを演じる。
- 特に、ピーター・フォンダの遺作となった本作では、彼が演じる帰還兵の苦悩が観る者の心を揺さぶる。
③ 戦場の記憶と、帰還兵のトラウマ
- ベトナム戦争を生き延びた兵士たちは、戦後も心の傷を抱え続けている。
- 彼らの証言を通じて、戦争がもたらした苦しみと、それを乗り越えようとする姿が描かれる。
視聴体験の価値
『ラスト・フル・メジャー』は、単なる戦争映画ではなく、英雄の真実を求める物語と、帰還兵たちの戦後の闘いを描くヒューマンドラマです。
作品の背景
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、1966年のベトナム戦争で実際に戦死したウィリアム・H・ピッツェンバーガー上等兵の実話をもとにした作品です。
彼の英雄的行為がなぜ50年もの間正当に評価されなかったのか、その背後にある歴史的背景や、映画が描く社会的テーマについて詳しく掘り下げていきます。
歴史的背景と時代の状況
① ベトナム戦争と「アバイエ作戦」(1966年4月11日)
- ベトナム戦争(1955~1975年)は、アメリカと北ベトナム(共産勢力)との間で繰り広げられた長期戦。
- 1966年4月11日、ベトナム南部で行われた「アバイエ作戦」では、アメリカ陸軍の兵士たちが激しい攻撃を受け、多くの負傷者が発生。
- この危機的状況の中、空軍の救難隊員であるウィリアム・H・ピッツェンバーガー上等兵(通称ピッツィー)は、ヘリコプターから降下し、負傷兵の救出に奮闘。
- 彼は20人以上の兵士を救助した後、敵兵に包囲されながらも最後まで戦い抜き、戦死した。
② 名誉勲章が与えられなかった理由
- ピッツェンバーガーの行為は、間違いなく名誉勲章(アメリカ軍最高の勲章)に値するものであったが、当時は「空軍の兵士が地上戦で戦う」という前例がなかった。
- さらに、軍内部の政治的事情や、戦争の評価を巡る問題も影響し、正式な名誉勲章の授与が見送られた。
- その後、ピッツェンバーガーの同僚や家族、元兵士たちは50年間にわたって名誉勲章の授与を求め続けた。
③ 50年後の再評価と映画化
- 2019年、ピッツェンバーガーの勇敢な行動が正式に認められ、名誉勲章が授与された。
- この歴史的出来事を映画化したのが『ラスト・フル・メジャー』であり、戦争の英雄を讃えるだけでなく、長年にわたり真実を求め続けた人々の闘いを描いている。
作品制作の経緯と舞台裏
① 監督トッド・ロビンソンの想い
- 監督・脚本を手がけたトッド・ロビンソンは、長年この物語を映画化しようと奔走していた。
- 彼は元兵士やピッツェンバーガーの家族と直接面談し、リアリティを追求するための入念なリサーチを実施。
- その結果、本作は戦争映画の枠を超えた「真実を追求する映画」として仕上がった。
② 伝説的俳優たちの集結
- 本作は、クリストファー・プラマー、ピーター・フォンダ、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ウィリアム・ハートといった大物俳優たちの出演が実現。
- 特に、ピーター・フォンダの遺作としても知られ、彼の存在が映画に特別な意味を与えている。
作品が持つ文化的・社会的意義
① 帰還兵のトラウマと社会の無関心
- 映画では、元兵士たちの証言を通じて、戦場の記憶が帰還後の人生にどれほど影響を与えるのかが描かれる。
- 彼らは戦場で仲間を失った悲しみを抱えながらも、社会から忘れ去られた存在として苦しみ続けている。
- これは、戦争が終わった後も続く「もう一つの戦い」を象徴している。
② 戦争映画の新しい形
- 戦争映画といえば、激しい戦闘シーンがメインとなる作品が多いが、本作は戦後の人々の闘いに焦点を当てている。
- これは、『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』とは異なる、静かで力強い戦争映画のスタイルを確立している。

『ラスト・フル・メジャー』は、戦場で散った英雄の物語であると同時に、彼の名誉を取り戻そうとした人々の闘いを描いた作品です。
ストーリー概要
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、ベトナム戦争の英雄ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの名誉を求めた、50年にわたる闘いを描いた物語です。
戦場の死闘、帰還兵の心の傷、そして政府の無関心を乗り越え、真実が明かされていく過程が、静かでありながらも強い感動を生み出します。
主要なテーマと探求される問題
① 「英雄」とは何か?
- 戦場で命を懸けて仲間を救ったピッツェンバーガーの行動は、間違いなく英雄的だった。
- しかし、当時の軍内部の事情により、彼の行為は正当に評価されなかった。
- 映画は、「英雄とは、国家や組織によって決められるものなのか? それとも、彼の行動そのものが英雄なのか?」という問いを投げかける。
② 50年の時を経ても続く戦争の傷
- ベトナム戦争の帰還兵たちは、戦場を生き延びたものの、戦争の記憶と戦後社会の冷たい扱いに苦しんでいる。
- 彼らは、ピッツェンバーガーの勇敢な行為を証言しながら、自らの傷とも向き合っていく。
- 戦争は、戦場だけでなく、その後の人生にも続いていくことを映画は静かに訴えている。
③ 政府の官僚主義と「忘れ去られる英雄」
- 主人公スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)は、ピッツェンバーガーの名誉勲章授与の調査を担当するが、最初は単なる仕事としてしか考えていない。
- しかし、彼が元兵士たちと関わる中で、「英雄の名誉がなぜ50年も認められなかったのか?」という疑問を抱き、真実を追うことを決意する。
- 政府が戦争の功績を政治的に利用しようとする姿勢が、ピッツェンバーガーの正当な評価を遅らせた背景にあることが徐々に明かされる。
ストーリーの概要
第一幕:ピッツェンバーガーの英雄的行為
- 1966年4月11日、ベトナム戦争の「アバイエ作戦」で、米陸軍は敵軍の激しい攻撃を受ける。
- ピッツェンバーガー上等兵(ジェレミー・アーヴァイン)は、負傷した兵士たちを救うため、自らヘリコプターから戦場に降下。
- 彼は銃撃戦の中、次々と負傷者を救出し、最後まで撤退せず、最前線で戦い続けるが、ついに戦死。
第二幕:50年後の再調査
- 50年後、国防総省の官僚スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)は、名誉勲章授与のための調査を命じられる。
- 最初は面倒な仕事だと考えていた彼だが、ピッツェンバーガーを知る元兵士たち(サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、ウィリアム・ハート)と面談するうちに、隠された真実を知ることになる。
- 彼の行為がなぜ当時正当に評価されなかったのか、軍の隠蔽や政治的な事情が明らかになっていく。
第三幕:帰還兵たちの証言と戦争の記憶
- ハフマンは、ピッツェンバーガーの父(クリストファー・プラマー)や、帰還兵たちの証言を集める。
- 彼らは、ピッツィーの勇敢な行動を語りながらも、自らの心の傷と向き合っていく。
- ピーター・フォンダ演じるジミー・バーリントンは、PTSDに苦しみ、社会から孤立していたが、ピッツェンバーガーの名誉回復を機に、自らのトラウマと向き合う勇気を得る。
クライマックス:真実の解明と名誉勲章の授与
- ハフマンは、上層部に掛け合い、ピッツェンバーガーの名誉勲章授与を求める。
- 政府の官僚主義や軍の過去のミスが明らかになるが、元兵士たちの証言と家族の支えが、ついに彼の名誉を勝ち取る。
- 最後のシーンでは、ピッツェンバーガーの名誉勲章授与式が行われ、彼の名が正式に歴史に刻まれる。
視聴者が見逃せないシーンやテーマ
① ピッツェンバーガーの最後の戦い
- 彼がなぜ撤退せずに戦い続けたのか、そして最後に見せる「決意の瞬間」に注目。
② 元兵士たちの証言のシーン
- それぞれの証言がピッツィーの人物像を形作っていく構成になっており、彼の英雄性が明らかになっていく過程が感動的。
③ 名誉勲章授与式のシーン
- 50年の歳月を経て、ようやく正当な評価を得る場面は、戦争映画としては異色の「静かなクライマックス」。
- ピッツェンバーガーの父(クリストファー・プラマー)の表情が、この映画の全てを物語っている。

『ラスト・フル・メジャー』は、単なる戦争映画ではなく、「正義とは何か?」を問いかける作品です。
作品の魅力と見どころ
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、戦場の英雄の真実を求める戦いと、帰還兵たちの心の傷を描いた感動作です。
本章では、映画の特筆すべき演出や映像美、社会的テーマの探求、視聴者の心を打つシーンを深掘りします。
特筆すべき演出や映像美
① ベトナム戦争の戦場をリアルに再現
- ピッツェンバーガーが戦った「アバイエ作戦」のシーンは、リアルな戦闘描写と緊張感あふれるカメラワークで描かれる。
- 砲撃の爆音や兵士たちの息遣いが伝わるような演出が施され、観る者を戦場へと引き込む。
- 手持ちカメラを駆使した映像は、混乱と恐怖を体感させる臨場感を生み出している。
② フラッシュバックを効果的に使用
- 映画は、現在(50年後の調査)と過去(戦場での出来事)を行き来しながら進行する。
- これは、ピッツェンバーガーの勇敢な行為がどのように語り継がれ、影響を与えたのかを強調する効果を持つ。
- 戦場の回想シーンは色彩が荒く、緊張感のある映像で表現され、対照的に現代パートは静かで落ち着いたトーンになっている。
③ 名優たちの「静かな演技」
- クリストファー・プラマー(ピッツェンバーガーの父)、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダなど、ハリウッドの名優たちが集結。
- 彼らは派手な演技ではなく、静かで重みのある演技で戦争の記憶やトラウマを表現。
- ピーター・フォンダの遺作となった本作では、彼の演じる帰還兵が抱える心の闇が、観る者の胸を打つ。
社会的・文化的テーマの探求
① 「英雄」とは何か?
- ピッツェンバーガーの行動は、間違いなく英雄的だったが、その名誉はすぐに認められなかった。
- 彼の勇敢な行動を知る人々は、50年かけてその真実を証明しようとする。
- 映画は、「英雄は戦場で生まれるのか、それとも人々の記憶の中に生きるのか?」というテーマを投げかける。
② 帰還兵のPTSDと社会の無関心
- 戦争は戦場だけのものではなく、帰還後の人生にも影を落とす。
- 物語に登場する元兵士たちは、戦場での体験を忘れることができず、心に深い傷を抱えている。
- しかし、社会は彼らに無関心であり、彼らの証言がなければ、ピッツェンバーガーの真実も葬られていたかもしれない。
③ 政府と軍の官僚主義
- ピッツェンバーガーの名誉勲章は、政治的な理由で50年間授与されなかった。
- 映画は、政府や軍の「英雄を讃えるシステムが、時に英雄を忘れ去る」という矛盾を描いている。
視聴者の心を打つシーンやテーマ
① ピッツェンバーガーの最後の戦い
- クライマックスの戦闘シーンでは、彼が最後まで負傷兵を救おうとする姿が描かれる。
- 彼の決断と犠牲の瞬間は、まさに「ラスト・フル・メジャー」(最大限の犠牲)を体現している。
② 名優たちの証言シーン
- サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、ピーター・フォンダらが演じる帰還兵たちは、それぞれの方法でピッツェンバーガーとの思い出を語る。
- 彼らの表情や言葉の端々に、戦争の記憶がいかに生々しく残っているかが伝わる。
③ 名誉勲章授与のシーン
- 映画のラスト、ピッツェンバーガーの父(クリストファー・プラマー)が、50年越しに息子の名誉を勝ち取る。
- 父の表情と、彼の仲間たちが涙を浮かべながら立ち会うシーンは、映画の最大のクライマックスとなる。

『ラスト・フル・メジャー』は、戦争映画の中でも特に静かで深みのある作品です。
ワインに例えるなら、それは長い年月を経て熟成された、重厚で余韻の残る一本。
最初の味わいは控えめですが、時間が経つにつれ、その奥深さと意味がじわじわと心に染み渡っていくことでしょう。
視聴におすすめのタイミング
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、単なる戦争映画ではなく、正義を求める闘いと戦争の記憶に向き合う人々の物語です。
そのため、鑑賞するタイミングによって、映画の持つメッセージがより深く響くでしょう。
本章では、本作を観るのに最適なシチュエーションと、視聴時の心構えをご紹介します。
このような時におすすめ
タイミング | 理由 |
---|---|
実話をもとにした感動作を観たい時 | 50年の歳月をかけて英雄の名誉を回復する実話がベースのため、深い感動を得られる。 |
戦争映画の新しい視点を求めている時 | 戦闘シーンよりも、戦争の影響を受けた人々の人生に焦点を当てた作品で、従来の戦争映画とは異なる視点が味わえる。 |
名優たちの重厚な演技を堪能したい時 | クリストファー・プラマー、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダなど、名優たちの静かで力強い演技が光る。 |
戦争の記憶とその後の影響について考えたい時 | 帰還兵のトラウマや、社会が彼らをどのように扱うかを描いており、戦争が人生に与える影響について考えさせられる。 |
家族の絆や誇りについて考えたい時 | ピッツェンバーガーの父(クリストファー・プラマー)の存在が、映画において重要な役割を果たしており、家族の視点からも感動できる。 |
視聴する際の心構えや準備
心構え | 準備するもの |
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戦争映画というよりヒューマンドラマとして観る | 戦闘シーンよりも、人間ドラマの比重が大きいため、戦争映画の一般的なイメージとは異なる作品だと意識するとより楽しめる。 |
元兵士たちの言葉に耳を傾ける | 彼らの証言が物語の核となっており、一つ一つの言葉に重みがあるため、セリフをじっくり味わう姿勢が重要。 |
時間をかけてじっくり向き合う | スローペースな展開のため、急ぎ足で観るのではなく、ゆっくりと作品の余韻に浸る時間を確保するとよい。 |
涙を拭うハンカチを用意 | 名誉勲章授与のシーンや、帰還兵たちの証言シーンは感動的なため、思わず涙がこぼれる瞬間があるかもしれない。 |
静かな環境で集中して観る | 登場人物の表情や言葉に込められた感情が重要な映画のため、静かで落ち着いた環境での視聴がおすすめ。 |

『ラスト・フル・メジャー』は、戦争の英雄の物語でありながら、名誉を勝ち取るために50年間戦い続けた人々の物語でもあります。
作品の裏話やトリビア
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、50年もの歳月をかけて戦った人々の物語を描く作品ですが、その制作過程にも数々の興味深いエピソードがあります。
本章では、本作の制作の背景、キャストのエピソード、視聴者が見落としがちなポイントについてご紹介します。
制作の背景
① 長年の構想とリサーチ
- 監督・脚本を務めたトッド・ロビンソンは、1999年頃からこの物語を映画化する構想を持っていた。
- 彼はピッツェンバーガーの家族や元兵士たちに取材を重ね、可能な限り史実に忠実なストーリーを作り上げた。
- 実際の戦争経験者たちの証言を映画に反映することで、よりリアルな戦争の記憶を描こうとした。
② 実際の名誉勲章授与
- ピッツェンバーガー上等兵は1966年に戦死したが、名誉勲章が正式に授与されたのは2019年。
- その授与の過程には、50年間にわたり彼の名誉を求めて戦った帰還兵や家族の尽力があった。
- 映画はこの「戦後の闘い」を忠実に再現し、戦争が終わった後も続く影響を描き出している。
出演者のエピソード
① クリストファー・プラマーの熱演
- ピッツェンバーガーの父役を演じたクリストファー・プラマーは、撮影中に実際の関係者と話をしながら役作りを行った。
- 彼の演技には、「息子を誇りに思いながらも、彼を失った悲しみを抱え続ける父」の深みが表れている。
- プラマーは、本作の公開から1年後の2021年に91歳で逝去。本作は彼の晩年の代表作の一つとなった。
② ピーター・フォンダの遺作
- 1970年代に『イージー・ライダー』で一世を風靡したピーター・フォンダにとって、本作は最後の出演作となった。
- 彼が演じた帰還兵ジミー・バーリントンは、戦争の記憶に苦しみながらも、ピッツェンバーガーの名誉回復運動に関わることで自らの傷と向き合う役。
- フォンダは本作の公開直前の2019年に亡くなり、彼の演技は多くの観客の胸を打った。
③ セバスチャン・スタンのキャリア転機
- 主人公スコット・ハフマンを演じたセバスチャン・スタンは、これまで『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー・バーンズ役など、アクション映画の印象が強かった。
- しかし本作では、名誉勲章の授与という政治的な問題に関わる官僚という知的で内面的な役を演じ、新境地を開いた。
視聴者が見落としがちなポイント
① 戦場シーンの色彩の違い
- 映画は、現在(2019年)と過去(1966年)のシーンを行き来するが、戦場シーンはあえて退色したような色調にされている。
- これは、戦争の記憶が「遠い過去の出来事」であることを強調すると同時に、元兵士たちのフラッシュバックのような演出でもある。
② 名誉勲章授与の演説
- 映画の終盤、名誉勲章授与式のシーンでは、実際の軍関係者のスピーチが引用されている。
- その内容は、戦争での英雄的行為だけでなく、戦争がもたらす心の傷についても触れており、映画のテーマと密接に結びついている。
③ ピッツェンバーガーの遺品の扱い
- 映画の中で、ピッツェンバーガーのヘルメットや遺品が登場するシーンがある。
- これらは、単なる小道具ではなく、実際に彼が使っていたものを再現したものであり、リアリティを追求するために細部までこだわった演出となっている。

『ラスト・フル・メジャー』の制作には、実話に基づく重厚なリサーチと、名優たちの熱意が込められている。
締めくくりに
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、単なる戦争映画ではなく、「戦争の英雄」とは何か、そして戦争の記憶はどのように扱われるべきかを問う、深く感動的な作品です。
戦場での英雄的な行為だけでなく、それを50年越しに証明しようとした人々の粘り強い闘いが描かれ、観る者に大きな余韻を残します。
映画から学べること
① 真の「英雄」とは?
- ピッツェンバーガーの行動は、戦場で仲間を救うために自らを犠牲にした「英雄的行為」でした。
- しかし、彼の名誉がすぐに認められなかったことは、「英雄」とは誰が決めるのか?という問題を浮かび上がらせます。
- 映画は、英雄とは単なる軍の勲章によって定義されるのではなく、「人々の記憶に残り、その影響を与え続ける存在こそが真の英雄」であることを強調しています。
② 戦争の記憶はどう扱われるべきか?
- 本作では、戦争が終わった後も戦い続けた人々、特に帰還兵たちの苦悩と名誉の回復が描かれます。
- 彼らは単に過去の出来事を語るのではなく、戦争の影響が現在の社会にも続いていることを訴えています。
- これは、現代においても戦争の記憶をどのように継承し、歴史の教訓として活かしていくべきかという重要な問いかけとなっています。
③ 政治と官僚主義がもたらす不正義
- ピッツェンバーガーの名誉勲章授与が50年も遅れた理由には、政治的な思惑や軍の官僚主義が大きく関与していました。
- この映画は、国家や組織が「不都合な事実」を隠し、真実が埋もれてしまう危険性を描き出しています。
- しかし、その真実を明るみに出し、正義を取り戻そうとする人々の力が、最終的に歴史を動かしたことが示されています。
視聴体験の価値
『ラスト・フル・メジャー』は、戦争映画でありながら、戦争そのものよりも、その後に残る人々の闘いに焦点を当てた作品です。
そのため、次のような視点で観ると、より深く楽しむことができます。
- 「英雄」とは何か?を考えながら観る
- 戦争映画としてではなく、ヒューマンドラマとして捉える
- 帰還兵たちの証言の重みを受け止める
- 政治や社会の中で、真実がどのように扱われるのかを考察する
最後に
親愛なる映画ファンの皆様、『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』の鑑賞ガイドを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、戦争の英雄を讃えるだけでなく、歴史の中で忘れ去られそうになった真実を、いかにして取り戻すかを描いた作品です。
名優たちの圧倒的な演技、重厚なストーリー、そして心を打つメッセージが、観る者の心に深い余韻を残すことでしょう。
ワインに例えるなら、それは長年熟成され、ようやくその真価を発揮する一本。
初めは穏やかに感じるかもしれませんが、時間が経つにつれ、その深みと重みがじわじわと心に染み渡る作品です。
この映画を通じて、戦争、英雄、そして正義について改めて考えるきっかけになれば幸いです。
それでは、また次回の映画鑑賞ガイドでお会いしましょう。
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